ベトナムには招待で。
台湾ではアドリブで。
アジアの路上にて。
それぞれに全く違う環境の中で俺は髪を切ってきた。
その中で、いくつか気づいた事がある。
今日はそんな話。
ベトナム
ドラマのキムタクに憧れて美容師になった俺が、まさか海外でもハサミを握る事になるとは、あの当時は夢にも思わなかった。
中2だった少年にそんな未来が想像できるわけがない。
でも、気づけば俺は真夏のベトナムという灼熱の路上の上で、汗だくで毛だらけになりながら。
ベトナム人の髪をただひたすら切っていた。
ありがたい事に、「招待」という素晴らしいお話を頂き、ハサミとスーツケースだけを持ってベトナムはダナンへと飛んだ。
旅費も全額負担してくれて、ホテルは4つ星。
屋上にはプールがあり、その下にはジムも完備。
「最高かよ!!」なんて叫びながら飛行機に飛び乗ったのを覚えてる。
台湾
まぁ、最初の行き先は台湾でもなんでもなく。
「国内をちょいと西の方にでも向かってゆるく旅にでも行くか」。
最初はそんな感じだったんだけど、とあるお客さんが言い放った「台湾は3万で行ける」ってワードが刺さり、その瞬間に行き先は台湾へと変更されるというのが事の発端で。
そこで何故か心の奥底から湧き上がってきたのは「俺は完全にアウェイな環境で人を喜ばせる事が出来るのか?」という思いだった。
ベトナムではセッティングされた環境で、現地の人が通訳に入り、ベトナム人のお客さんとの仲介を買って出てくれるいわば「どんどん髪を切ってください」という設定。
でも、今回は完全にアドリブで、言葉もわからない中で「お客さん」も自分で「ハント」するという状況。
共通してるのは「路上」ってだけ。
明らかに後者の方が前途多難なわけだけど、そこに無性にチャレンジしたくなった。
まぁ、水道もその場にはないから「シャンプー無し」「手洗い無し」ってのも共通だけど。
結果
ベトナムでは3日間のイベントでかなりの数の人数を切った。
台湾では1時間半で6人を切った。
ベトナムでは日本円にして約1000円。
台湾では日本円にして約400円をチップとして頂いた。
みんな笑顔だった。
それがすごく嬉しかった。
人種、国籍関係なく、その場所は凄くハッピーな空気が流れてた。
それを作り出せた事が、この上なく嬉しかった。
溶け込む力
台湾の台北101。
ここは台湾の中でも中心で、物凄く栄えていて観光客もたくさんいる。
いきなりだけど俺はこの場所で唐突に軽い自己紹介を台湾語で書いたダンボールを掲げた。
これは日本で書いた物を持参してたんだけど、まぁそんなことをいきなりやっても誰も見向きもしないし、なんなら「えっ?何?この人。。」ぐらいの視線。。
そりゃそうだよな。。
ダンボール掲げてる奴が「日本から来ました。髪切ります!」って言ってたところで切るわけがない。
俺は場所を変え、やり方も変えた。
少しローカルな街に移動し、いい感じの公園を見つけ、しばらく人間観察。
カップル、家族、観光客。
実に様々な人たちが集まる公園で、その中でも地元感満載の「犬の散歩をしたおっちゃん」に声をかけ、12キロのミニチュアダックスを抱っこさせてもらいながら思った。
「これだ!!」
まずは話しかけて「俺という人間を少しでも知ってもらおう」。
ここから始めた。
それからだった。
現地にいた家族に声をかけてみると、「子供を切ってくれ」と言われ、ベビーカーに乗りながら切ったり。
何気ない会話をしていたおっちゃんは三日前に髪を切ったばかりで、「俺はいいよ」と断っていたのに「やっぱりやってくれよ」と切らせてくれたり。
共に話し、目と目を合わせ、笑顔になることで多少の信頼関係が生まれ、「俺」という人間を理解してくれた上で「髪を切ってくれよ」とチップを倍にしてまで髪を切ってくれる。
俺は大切な事を身を以て学んだ。
チューニング
プライドとか見栄とか。
そんなのはどうでもよくて。
「今、この場所で目の前にいる人に喜んでもらうために、お前には何ができる?」
そう言われた時に俺は自分の中でのチューニングを調整する必要が少なからずあって。
日本での「freedom」って店のチューニングから「台湾の路上」へと変えていく事が何よりも重要で。
まぁ、ぶっちゃけいつものスタンスをそこまで大きく変える必要もないぐらい、ありがたい事に普段から俺はラフにやらせてもらってるからそこまでこの作業自体は苦ではない。
それでもお国が違うわけだからベトナムの時は「ベトナムの路上」に合わせるし、今回も同じ。
何がチューニングなんだと言われると、現地の人と「同じ目線で物を見る」ということ。
もし、自分が台湾人で「俺みたいな日本人」がいたらどう思うかな?とか。
そこに言葉は関係ないとまでは言わないけど、片言の英語や現地の言葉でも想いは通じる。
共通の話題があればそれが一番いいけど、ただ隣にいるだけでも伝わるものはある。
一回じゃなくて、いろんな人とそれを繰り返していくことによって、少しづつ少しづつ自分もその場の雰囲気に溶け込んでいくんだ。
それを俺は「チューニング」と呼んでて、「溶け込む力」になるんだと思う。
これは何も海外に限った話ではなく、日本でもそうだよね。
転校、転職、入学、入社。
国籍なんて関係なくて、いつでもどこでも「初めまして会」ってのはそんな感じでしょ。
これからも色々な場所や人にチューニングを合わせて、たくさんのことを吸収して生きていたいね。
そんな大切なことを「アジアの路上」から俺は学んだ。
life is freedom…
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